1.連邦政府より州政府が優先
アメリカの医療制度は複雑で、ひと言で説明するのは難しい。これはアメリカが合衆国と呼ばれる有機的な集合体だからで、長いこと単一国家で育った日本人には理解し難いものがある。
例えば、警察官は今でも西部劇で見られる保安官 ( シェリフ ) そのもので、その街に住む人たちに雇われた用心棒である。そのため警察官の少ない町では自らの手で家族の安全を守らなければならない。
拳銃やライフル銃の所持が法律によって許されているのはそんな理由からで、民間人がもっている銃の数は推定で 1 億 1000 万丁にものぼっている。これがまた安易な殺人や自殺者を増やすことにつながっているのだ。
警察の種類も複雑で市長が任命する市警察、州知事が任命する州警察があったりで、いったん事件が起きるとその捜査権の縄張り争いがいつも問題になる。犯罪が二つの州にまたがると問題はさらに複雑化する。こうなると捜査はFBIやCIAに移り、市警察や州警察は我れ関せずとそっぽを向いてしまう。
そのために犯罪の逮捕率は先進国の中で最も低いと言われている。あわせて郡と州が別々に軍隊をも持っているのだから、話はなおさら複雑になる。
このように医療福祉事業のある部分は連邦政府で、残りが州政府や民間保険会社が担っているわけだから、医療の管理はなおさら難しい。カナダもアメリカと同じ方式をとっていて、 10州がさまざまな医療システムを採用している。
その理由は英国から独立する際、13の州がそれぞれの国家として自主独立運営していくか、それとも統一国家として国力を強めていくかにあった。この問題についてついては、各州の利害関係を絡みながら長い討議が行われた。その結果、州の自主性を尊重した合衆国という考え方が出来上がったのである。