4.弱者を救済する公的医療保険制度
J.F.ケネディーがダラスで暗殺された後、大統領を引き継いだジョンソンは、対外的にはベトナム北爆を強化しつつ、内政面では貧困との戦いをスローガンにして、黒人をはじめとする国民の不満を和らげる政策をとった。その目玉がお年寄りに適用される公的医療保険「メディケア」(Medicare)と、低所得者を対象とした「メディケイド」(Medicaid)であった。メディケアとメディケイドは1965年(昭和40年)から導入されたが、社会保障制度の遅れていたアメリカで大いに歓迎された。
メディケアは65歳以上のお年寄りや重度の腎臓疾患、身障者などが病気や怪我などで医療を受けた場合、医療費を一般税収(社会補償税)から負担する制度で、日本の老人医療とよく似ている。加入者数は約4,000万人いて、これはパートAとパートBに分けられている。
メディケイドは低所得者層などへの医療給付を保障する制度で、連邦政府と州政府の共同事業で行われている。財源は一般税収から拠出しているが、その運営は州政府に任されている。65歳以上のお年寄りであっても、一定の所得に満たなければメディケイドの適用で「メディカリー・ニーディー」と呼ばれている。一定の所得以下といっても州によってまちまちで、おおむね年収が1万2千ドル程度と考えたら良いだろう。21歳以下の子供を持つ片親や身障者もメディケイドが適用され、対象者は「カテゴリー・ニーディー」と前者と区別されている。経済的に豊かな州では処方せん薬や眼鏡、歯科治療費までが補償されている。
公的医療保険に支払われる財源は連邦政府が67パーセントを、残りの33パーセントを州および地方税で賄っている。それぞれの州が異なった政策をとっているだけに、勤労意欲のない人たちは福祉の厚い州へと集まってくるのは仕方がない。選挙では福祉政策を公約に挙げる知事に一票を投じることになるし、当選した知事は更なる出費を迫られる。これら所得の低いメディケイドの対象者は3,000万人からいて、全人口の10パーセントを超える。