16.出来高払いから定額払いの医療へ
DRGの考え方は、今までの出来高払いの医療から定額払いへの改革にあった。DRG下における医療は老人に多い疾患を467種類に分類し、各疾患毎に医療費の上限と入院日数を定めた診断群制度である。この基礎計算はランダムに抽出された病院治療費を疾病ごとに調査を行い、国際傷病分類などを絡ませながらエール大学のコンピューターが算出した。
たとえば、老人疾患に多い肺炎の場合、入院日数は9.6日までで医療費の上限は8、600ドル。胃ガン初期手術は6.7日を限度とし、費用は4、800ドルまでと決められた。その枠を超えた費用は総て医療機関の持ち出しとなってしまう。一方、その金額以内に収まった場合はすべて病院の利益になる仕組みである。
長期にわたる入院の場合、最初の60日までは304ドルの自己負担で医療サービスが受けられる。その日数を超えるときは、90日まで1日あたり76ドルを超える部分について政府が負担する。91日以上にわたって入院する場合は基礎算定額は更に増加し、1日152ドルを超える部分が保障される。DRGシステムの導入は、三年の歳月をかけながら段階的にすすめられた。導入期の1983年には病院側算出治療費を75パーセントとし、DRG額を25パーセントの比率で計算。翌年には病院側算出額とDRG額をそれぞれ50パーセントに。85年は病院が25パーセントに下がりDRG額の比率を75パーセントにした。そして1986年にはDRG算出額100パーセントで完全実施の運びとなった。
だが大都市と地方では土地の値段も異なるし、病院のリース料も人件費も大きく違う。にも関わらず、DRG下では一定額の治療費しか支払われない。そんな理由から大都市の病院では経営難に陥っているところが半数以上に上っている。これがまた支払い能力のない病人の診療拒否を生み、たらい回しにされるといった大きな社会問題にもなっている。
老人疾患はいくつもの病気が重なって起きるだけに、ひとつの疾患ですべてを片づけるわけにはいかない。そこで467の疾患分類は496に増加され、今日では1、600分類に細分化することが検討されている。
下の表は先進各国の入院日数と糖尿病疾患の平均日数を比較したものだが、過去10年間先進各国の入院日数は大きく減少してきた。しかし、日本の状況は西欧諸国と比べてまだまだ差が大きい。