19.公的医療費を補足するメディギャップ
政府が費用を負担する公的医療保険にメディケアとメディケイドがあることはすでに述べた。メディケアにはパートAとBに分けられるが、「メディケア・パートA」は病院費用に限られる強制適用で、連邦政府のHCFA局が運営にあたっている。財源は国民から徴収される社会保障税によって賄われており、支払いは連邦政府の保健福祉省が運営にあたっている。社会保障税は課税対象給料の7パーセントを支払うものだが、天引き額の上限は464ドル10セントまでとなっている。
「メディケア・パートB」は任意加入で、外来医療、定期検診、輸血などの費用がカバーされる。主な財源は国庫負担だが、その恩恵を被る加入者からは保険料としての総額200億ドルが徴収されている。パートAの対象者が加入したくない旨を申し出ない限り、自動的にパートBの加入対象となるため90パーセント以上のお年寄りが加入している。
メディケアでカバーされない医療や基準額を超える医療費は患者負担となるため、多くの人は「メディギャップ」と呼ばれるメディケアの補足的民間医療保険に加入している。入院する際にはセミプライベイトルームが使用でき、一般的看護と種々の病院サービス及びサプライが含まれる。在宅医療に切り替えた場合は、必要とされる器具器械のリース料と熟練ケア者の費用などが支払われる。
長期間にわたってベットや車椅子が必要とされる場合、購入した方がリース料に比べて安いと判断されると購入代金の全額が支払われる。だが、それぞれの価格に枠組みがされているため、必要最低限度のものになっているのが実態だ。「ホスピスケア」は痛みを緩和する麻薬や終末期の患者へのサポートサービスに限られている。
メディケイド対象者の処方せん枚数は年間3億枚からあって、政府の薬剤負担額は80億ドルに上っている。その費用を抑制するために使用できる医薬品をフォーミュラリー(医薬品集)で限定している。そのため、このリストに収載されていない医薬品は一切使うことが出来ない。もし患者が新味性のある新薬を希望すれば全額個人払いになってしまう。残念なことだが、ここ数年新しく開発された高価な新薬はフォーミュラリーに収載されていない。
薬剤費の抑え込みはこれだけに留まらない。連邦政府は薬剤費の償還に関して、販売価格の実勢価に応じたEAC価格(Estamated Acquisition Cost)に基づいて行うよう州政府に指導している。ここで言うところの実勢価とは、AWP(Average Wholesale Price:平均問屋出荷価格)から5パーセントから15パーセントを差し引いた価格で、購買力の弱い自営薬局トにとっては厳しいものがある。ジェネリック(後発品)が存在する医薬品の償還ではEACは用いられず、FUL(Federal Upper Limits)が用いられる。
FULとは同成分規格品のうち最低価格の150パーセントに設定されている。いわば、薬局にとっては銘柄品よりゾロ品を使った方が利益率が大きいし、支払側にとっては安価で済むことになる。1994年に特許が切れたシメチジン(H2ブロッカー)について考察するとき、ロサンゼルスをドミナントとするチェン店「セイブオン・ドラッグ」では後発品が大きく貢献していることが理解できる。
銘柄品のタガメットを使った調剤ではわずか2ドル11セントの利益しかないが、ゾロ品のシメチジンを使うと処方せん1枚につき28ドル96セントの利益になる。これを年間になおすとゾロ品は1000万ドルを超す利益を上げている。これに対して銘柄品では10万ドルに満たない利益である。
