21.マネージドケアに移行しはじめた米国医療
保険会社が売っている営利保険から、掛金の安いマネージドケアに流れる加入者が急増しているが、ちかごろPPO(Prefered Providers Organization)という医療組織が注目されている。PPOはHMOと同じような組織だが、「優先的供給者組織」といったら理解しやすいだろう。
HMO組織は定額報酬の医師を抱えた医療機関を持ち、被保険者はその医療機関で治療を受けた場合のみ医療費が償還される。PPOは出来高払いをとりながらも、受診可能な医療機関や医師が決められている。患者はPPO指定医師以外にも掛かることもできるが、この場合は一部自己負担が生じるように設定されている。
HMOとPPO組織はマネージドケアと呼ばれ、徹底した無駄を省いた安価で効率的な医療の提供に努めている。民間保険会社の掛け金が高騰するなかで、マネージドケアは大きくシェアを伸ばしており、アメリカ国民の大半がHMOもしくはPPOに加入していくものとみられている。現在PPOは約1億人が加入しているが、新メディケアが本格稼動すると米国民の大半はここに集まることになろう。
多くのマネージドケアでは、徹底したコスト管理のもとに薬剤費の抑制を行っている。カイザーパーマネンテでは、まずアドバイスナースに電話をして治療の指示を受けるが、カゼなどの軽疾病では自宅療養しか受けつけない。そのかわり数時間後には、患者のもとにコールド・セルフケア・キット(カゼ治療セット)が送られてくる。その中には3種類のクスリと喉飴、無塩チキンスープの素、ハーバルティーが5日分入っている。患者はキットの中に添付されている治療マニュアルに従って、カゼを治さなければならない。
コスト管理が行われているアメリカの医療では、高血圧は症状であって病気ではないという考え方をもっている。そのため血圧の高さによって治療法も決められていて、ステージ1(最高血圧140〜159:最低血圧90〜99)、ステージ2(最高血圧160〜179:最低血圧100〜109)、ステージ3(最高血圧180〜209:最低血圧110〜119)、ステージ4(最高血圧210以上:最低血圧120以上)の4つに分類されている。ステージ1とステージ2のレベルでは処方せんが貰えない。
そのかわり生活指導によって高血圧を治す方法が採用されている。その治療法とは体重を減らす、アルコールと塩分を減らす、定期的に運動する、禁煙の4項目で、3カ月間の生活改善で血圧が下がらない場合に限って、はじめて医薬品の使用が許される。だが、HMOでは独自の医薬品集を採用しているため、使用される薬剤は安価なベーターブロッカーか降圧利尿剤に限定されている。近ごろではジェネリック(後発品)による代替調剤がほとんどのマネージドケアで義務づけられているため、高価な新薬の採用は非常に難しくなっている。