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薬剤師の転職・就職サイト > お役立ち情報 > 保坂のりよしの医療制度改革レポート

23.受け皿の整備が在宅医療を進めた

これを補う意味から、1989年にはSHIP(State Health Insuarance Program)という「ハワイ州健康保険制度」が創設された。年間所得が生活保護基準以下の人は無料で、また生活保護基準の3倍までの所得のある人はスライド方式に基づいた掛け金を支払えば加入することが出来る。フロリダ州でもハワイと良く似た州民保険制度を行っているが、生活保護基準の2.5倍までの所得者に限定している。

だが、加入状況はどちらも生活保護基準すれすれの人たちで、85パーセントが生活保護基準の1.5倍以下の人が占めている。この健康保険制度は一次医療と予防医学に重点がおかれており、また入院した際は費用のかさむ医療の給付を受けることができる。ハワイ州の医療福祉政策が他州より厚いのは、マルハイア・プロジェクト(Maluhia Project)とよばれるプログラムによるものである。

医師、看護師、薬剤師、テラピストによって構成される専門医療チームが、在宅患者を訪問して治療にあたるシステムがこれである。マルハイア・プロジェクトの普及は入院患者を減らし、そのためお年寄り1人あたりの医療費は他州と比較して大幅に少くなっている。

ファーマケア社は1983年3月にホームパレンテラル・アンド・エンテラル・サービス・オブ・ハワイとして設立され、ハワイで最初の非経口、また経管を通しての栄養補給、静注対菌療法、並びに化学療法などのサービスを提供する会社として急成長を遂げた。患者は退院前から医師、ホームケア・ナース、薬剤師などから構成されるチームケアによって適切な治療プランが立てられ、患者とその家族たちに退院後の治療方法、器具の使用方法について分かりやすく総括的に指導されている。

在宅治療に必要な器具機械などは、必要に応じて一括して家庭まで配達される。緊急時に備えるため24時間受付のホットラインが設置され、医師やホームヘルスナースと緊急連絡が取れるように整備されている。必要とされる医薬品は医師の指示にいつでも応じられる態勢を整えている。

治療に掛かる費用はHMSA、メディケア、メディケイド、民間医療保険会社との密接な連絡のもとに、早い償還できるよう万全を期している。そのためのルーティン・サービスとして、経験豊かなスタッフがハワイ州における保険プラン組織に必要な報告処置を行っている。

ファーマケア社の医療サービスは多岐にわたるが、利用者の多いTPN(非経口栄養完全補給法)は、経口から必要とする栄養および薬物を摂取できない患者に静脈から補給する治療法である。この治療は担当医師とホームケア・ナースとの密接な連携のもとに行われている。

経口栄養補給法は食事がとれない患者に特別栄養液が用意され、治療に必要な栄養液と器具が患者の家まで届けられる。静注による抗生物質療法は、重症な細菌感染をおこしている患者に対して、抗生物質の静注点滴を可動性のポンプを使用して行い、また患者自身で薬物投与できるよう、熟練した正規看護師による手助けが行われている。

ガン患者に対する化学療法は地域ごとに専門医師の指示にしたがい、通院患者のみならず在宅で治療している人についても家庭で治療が行える。痛みに対する処置法は、経口鎮痛剤ではコントロールできないような激痛のある患者に対し、特製の携帯ポンプを使って持続的に薬物療法を行うものである。

総括的糖尿病治療は、完全看護を必要とする糖尿病患者に対し医薬品と治療に必要なモニターを提供している。患者の治療に対する理解を深め、それぞれが闘病上の自覚を施す治療指導が在宅医療に最も大切なことだとバイロン・ヨシノ社長は述べている。

連邦政府は口を出すが金は出さない。そこでオレゴン州では医療サービスを州の管理下におくことを考えた。これがSDSD(Senior and Disabled Services Division)という組織で、限られた資源を公正に配分するユニークな方法として注目されている。

公的医療を受けようとする場合は、まずケースマネージメントの窓口を訪ね、ここで専門家による医療内容の評価を受ける。その評価に基づいて州が提供する医療内容が決められ、州民は生涯安心して医療の恩恵にあずかることが出来る。従来では複数の病院で治療を受け、ナーシングホームに入りたければ福祉局へ、介護サービスを受けたければ市庁舎の窓口へと訪ね歩いていたものが、この窓口一つで用が足りる。

このやりかたは北欧の医療システムと良く似ている。受益者は地域ごとに整備された保健所に行き、自分の希望や資格要件に合致するサービスを求めるだけで良い。従来のように複数の関連部局を歩き回る無駄がなくなった。これはケースマネージメントの相談員が、あらゆる情報を熟知しているから出来ることで、たとえば介護サービスにおいては買い物の手伝いや代行、食事の宅配、テラピストの派遣など必要に応じて手配する。

ナーシングホームやフォスターホームがこの所轄下にあるというのも他州では見られない制度だ。無駄な医療費を少しでも減らし、お年寄りが長くこの地域に留まって、生活できることを主眼としているこの制度は全米から注目されている。わが国でも「介護保険制度」が導入されたが、目先の医療費削減を主眼にするのではなく、ぜひともSDSD(Senior and Disabled Services Division)の考え方を参考にして欲しい。

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連載コラムTOP


 序.米国の医療改革が
        日本に及ぼす影響


 2.民間医療保険が
        医療の中核を担う

 3.民活から始まった
        医療保障制度

 4.弱者を救済する
        公的医療保険制度

 5.税金が安く福祉充実の
        州へ人口移動

 6.地域医療を担う
        ホームドクター制度

 7.さらに細分化される
        専門医制度

 8.掛け金によって異なる
        医療サービス

 9.米国の病院における
        医療サービス


 11.在宅医療を支える
        ボランティア社会

 12.民間活力が誕生させた
        HMO医療組織

 13.ニクソンが導入した
        新医療保険

 14.カーターから
        レーガンの時代へ

 15.医療事業の
        連邦予算による支出

 16.出来高払いから
        定額払いの医療へ

 17.先進国の平均入院日数と
        糖尿病疾患


 19.公的医療費を補足する
           メディギャップ

 20.米国の処方医薬品
           上位100品目



 23.受け皿の整備が在宅
           医療を進めた

 24.バウチャーを配給する
           ブッシュプラン

 25.負担額によって決まる
           医療サービス

 26.大きな政府の
           復活になるか


 28.処方せんフィーは
          2ドル50セント

 29.6年間で612店の
          独立薬局が消滅

 30.専門性への転換を
          進めるキーン氏


 32.議会が処方せん
        薬価抑制法案を検討




 36.より手ごろな価格の
           医療を約束



 39.医療のセキュリティー
           ナンバー制度





 44.医療費を押し上げる
          医療過誤保険

 45.一夜にして
          百万長者になれる


 47.医療保険の
           不思議なからくり


 49.一杯のコーヒーが
           2億9000万円


 51.乱訴防止法は
         救世主になり得るか