26.大きな政府の復活になるか
マネージドケアの医療費抑制効果に着目したクリントン大統領は、1995年度から財政赤字削減をねらってメディケアとメディケイドの公的医療保険対象者をマネージドケアに委託することを考えた。政府は対象者の医療保険料をマネージドケアに一括支払することで、医療コストの増加リスクをマネージドケアに転嫁する格好となった。
1997年7月には財政均衡法(Balanced Budget Act of 1997)が議会を通過した。これによって1998年から2002年までの5年間はマネージドケアへの支払額を190億ドル削減することを決定したのである。また、郡(カウンティー)ごとの支払い実績に基づく算出方法を全国平均に変更するなど、思い切った改革を行っている。これによってメディケア支出の少ない地方部では一人あたりの支払額が増加し、都市部では支払額の増加が抑制されることになる。
1999年に入ると財政赤字は一気に好転のきざしを見せ、クリントン大統領は自らが弾劾裁判をかけられている異常事態の中で、民主党の伝統的な社会補償制度重視策を打ち出した。ベビーブーマー世代(1946〜1964年生まれ)の退職時期を間近にして、今後15年間で財政黒字額の60パーセントを社会保障救済に使うことを提案した。こうした政策実施で2032年には限界に達する社会補償費の支払いを、2055年まで延期できるという机上の計算が成り立った。
2010年には55歳から64歳の人口が現在の2、200万人から3、500万人に膨らみ、また2030年には米国の高齢者人口は現在の2倍になることから、クリントンはこうした世代に焦点を当てたメディケア制度改革が不可欠だと主張した。
メディケア改革については、@現在65歳以上となっているメディケア対象年齢を62〜64歳に引き下げ、月額300ドルの自己負担で医療補助を受けられるようにする。A55歳以上の失業者をメディケアの対象に加える。B55歳以上で勤務先の企業が健康保険を支給できなくなった人を対象とするなどの三本柱を考えた。
現在、55歳から64歳までで医療保険に加入していない人は約300万人いるが、このうち30万人が新たに公的医療の恩恵を受けられるようになる。だが、共和党では「大きな政府の復活」「福祉重視による弾劾そらし」と反発を強めてきた。