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薬剤師の転職・就職サイト > お役立ち情報 > 保坂のりよしの医療制度改革レポート

31.メディケアが外来処方せん薬を負担

民主党上院議員ケーリー氏に小差で勝利したジョージ・W・ブッシュ大統領だが、大統領選の公約でもあった高齢者向けの公的医療保険・メディケアの改革法案が、現地時間2003年11月25日、米上下両院をそれぞれ小差で可決した。病院以外で使用する外来処方せん薬も給付対象とする内容で、高齢者の負担を軽くするのが大きな柱となっている。ブッシュ大統領の署名によって、創設以来38年ぶりの大幅な制度改革となるメディケア制度だが、今後10年間で米連邦政府の財政負担は少なくとも4000億ドル(約44兆円)膨らむ見通しだ。

2006年1月から導入される新メディケア制度では、メディケア対象者が自らの判断で標準月額35ドルの保険料を支払っておくと、処方せん薬の一部が連邦政府から給付される制度がこれだ。年間に支払う処方せん薬代が250ドルから2,250ドルのお年寄りは、基礎控除額250ドルを差し引いた金額から、残りの75パーセントがメディケアから償還される。また5,100ドル以上の高額医療者は基礎控除された残額から95パーセントがカバーされることになる。だが、250ドルの基礎控除額は2013年までに445ドルに増加せざるを得ないといった変更案も見え隠れしている。

2,250ドルから5,100ドルの処方せん薬支出については全額自己負担で、いわば5,100ドルに達する迄は償還適用除外となっている。いわばお年寄り自身の財布から支払わなければならない。この差額である2,850ドルが今改革のエアポケットで、私の米友人はこの改革を皮肉って「ドーナッツ型医療制度」と呼んでいる。

メディケアは米国に住民権を有する65歳以上の高齢者全員と重度の腎疾患、そして身障者を対象とした公的医療保険で、全人口の約7分の1を占める4000万人が加入している。現行制度は主に病院での診察費、治療費や入院費をカバーし、院外処方せん薬は特別な保険でしか給付対象に加えていない。しかし高齢者の負担は年々増大しており、@保険料が高い(2004年のメディケア保険料は、$7.3(12.4パーセント増)上昇して月$66になるとみられている)、A薬局で購入する処方せん薬代は一部の保険でしか支給していない、B高齢者人口が増加すると将来的に破たんする恐れがあるなどの不満が強まっていた。再選を狙うブッシュ大統領は高齢者層の支持拡大を目指し、医療保険改革を経済政策の柱に掲げてきた。一方では政府にとって頭の痛いカナダからの安価な医薬品逆輸入阻止にあった。

下院は保険適用下限額を250ドル以上の処方薬代について2000ドルを上限に80パーセントをカバー、5,100ドル以上については100パーセント政府が負担することを主張。2,000ドルから5,100ドルの間は全額個人負担とした。また6万ドル以上の収入がある高齢者には適用除外の制度や限度額の設定の変更などを設けるとした。上院は275ドルを保険適用下限額とし、276ドルから4,500ドルの処方薬費用の半額を負担、5,100ドル以上は90パーセントを政府負担にするなどとした。また4,500ドルから5,100ドルの間は全額個人負担とした。上下院とも毎月の保険料は35ドル、実施は2006年1月からで一致。上院はそれまでの繋ぎとして、15パーセントから25パーセントまでの処方せん薬割引カード(Prescription drug discount card)を支給することを一貫して主張してきた。

現法案可決は医療費増加を抑制するのではなく、逆に連邦政府の財政負担を大幅に増やす内容となっている。高齢者向けの公的医療保険制度(メディケア)の改革は、ブッシュ政権が大型減税とともに掲げる経済政策の重要な柱で、米国社会の高齢化が進むなか、メディケアの改革は不可避の課題だったが、長いこと共和党と民主党の対立から議論が進んでいなかった。しかし中間選挙で上下両院の過半数を共和党が占め、改革法の成立機運が高まっていた。

新メディケアについての調整は、ブッシュ大統領が強く主張する@高齢者は処方せん薬について政府の指定なく、自分の必要な医薬品を使用できるようになる、A議会メンバーや連邦従業員と同様に最も適切な医療プランを選択できるようになる、B必要な治療を彼らの希望する医師、病院などで受けることが出来るようになる、C癌、糖尿病、骨粗しょう症の予防のための検査を全額補助する、D.高齢者にとって高い費用の自己負担をなくすようにする、など五つのポイントの是非が問われる。

米国では過去10年間に400品目に上る新薬が開発されてきたが、メディケア対象者には使用制限が設けられているため、すべてのアメリカ人に使用することが出来なかった。しかし、お年寄りがテレビ広告で見た新薬を自由に指名出来たり、生活習慣病の検査薬が保険適用になれば、1年当たり130億ドルもの市場拡大が見込まれる。

だが、今のイラク戦争が長引けば連邦政府の財政状況はさらに厳しいものとなる。ところで医療費高騰の原因として、いくつかの要素が例示されているが、その中でも最も高い伸びを示しているのがホスピスケアである。神によって与えられた生命を操作することが、本当に必要な医療経費なのかが問われている。人間の尊厳を守るために、オレゴン州などで認められている尊厳死法の導入が各州で検討されている。

なお新メディケアの管理は、今まで連邦政府が委託してきたHMO(Health Maintenance Organization)から、より効率的で制約の緩いPPO(Preferred Provider Organization)に移行される公算が高くなっている。HMOとPPOについては後述する。

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連載コラムTOP


 序.米国の医療改革が
        日本に及ぼす影響


 2.民間医療保険が
        医療の中核を担う

 3.民活から始まった
        医療保障制度

 4.弱者を救済する
        公的医療保険制度

 5.税金が安く福祉充実の
        州へ人口移動

 6.地域医療を担う
        ホームドクター制度

 7.さらに細分化される
        専門医制度

 8.掛け金によって異なる
        医療サービス

 9.米国の病院における
        医療サービス


 11.在宅医療を支える
        ボランティア社会

 12.民間活力が誕生させた
        HMO医療組織

 13.ニクソンが導入した
        新医療保険

 14.カーターから
        レーガンの時代へ

 15.医療事業の
        連邦予算による支出

 16.出来高払いから
        定額払いの医療へ

 17.先進国の平均入院日数と
        糖尿病疾患


 19.公的医療費を補足する
           メディギャップ

 20.米国の処方医薬品
           上位100品目



 23.受け皿の整備が在宅
           医療を進めた

 24.バウチャーを配給する
           ブッシュプラン

 25.負担額によって決まる
           医療サービス

 26.大きな政府の
           復活になるか


 28.処方せんフィーは
          2ドル50セント

 29.6年間で612店の
          独立薬局が消滅

 30.専門性への転換を
          進めるキーン氏

 31.メディケアが
      外来処方せん薬を負担

 32.議会が処方せん
        薬価抑制法案を検討




 36.より手ごろな価格の
           医療を約束



 39.医療のセキュリティー
           ナンバー制度





 44.医療費を押し上げる
          医療過誤保険

 45.一夜にして
          百万長者になれる


 47.医療保険の
           不思議なからくり


 49.一杯のコーヒーが
           2億9000万円


 51.乱訴防止法は
         救世主になり得るか