40.アメリカにおける困難な医療費の抑制
1935年の社会保障法にはじまった健康保険制度は、徐々に整備されてジョンソン政権時代に拡大した。この医療費は1980年度に553億ドルで、連邦歳出の9.4パーセントを占めていたが、1990年度には1558億ドルに増加し、連邦歳出の12.4パーセントを占めるまでになった。1997年度には3653億ドルで13.5パーセントに増加し、2004年には15パーセントを超えてしまった。
実際米国で赤字をつくっているのは、メディケア以上にメディケイドの方である。これは低所得者層に、連邦政府がと州政府が折半して医療を給与する制度である。メディケアのような年齢制限もないため対象者は1994年に1600万人だったものが2003年には3000万人に増加し、貧困ライン以下の人々の50パーセント近くが含まれている。
これほど米国の医療費が増える理由は、その医療費を負担している主体を調べると一目瞭然である。国民医療費の負担割合は、1990年に、連邦・州政府が41パーセント、民間保険会社が32パーセント、自己負担が23パーセント、その他が4パーセントとなっている。このように大部分が政府の負担であり、国民はわずかな自己負担しかないので、医療費を節約しようとする誘因がない。また、民間保険会社の負担が大きいことも一因である。アメリカの多くの大企業は社員の医療保険掛金を支払っている。多くのアメリカ人は医療費に関しては65歳までは会社をあてにし、その後はメディケアを頼っているのである。しかしながら、保険が医療費を払ってくれるので、やはり医療費を節約しようという誘因がない。これに加え、医師の殆どが専門医であるため、健康診断や予防が軽視され、結果として病気になってから治療が始まる。医師も所得を高めるため、あるいは医療過誤訴訟に負けて賠償金を払うことに備えるため、医療費をつり上げているのだ。ほかにも大きな問題が二つある。無保険の人の治療にかかった費用を、病院は保険に入っている人の分として請求するので、企業が保険会社に払う費用は実際以上に上昇しているのである。また保険会社が1500以上もあって、それぞれ支払方法や書類の様式が違うので、病院は請求書作成に時間がかかり、事務経費がかさんでいることも大きい。この医療費を削減することが財政赤字を削減する上でのおおきなポイントになることは間違いないであろう。