薬剤師の転職・就職支援サイト。薬剤師業界最大級の求人数と、豊富な転職・就職支援サービスをご用意しています

薬剤師の求人・転職支援サイト くすりびと.net

薬剤師の求人・転職・就職支援サイト
「くすりびと.net」

HOME 求人検索 転職・就職支援サービス お役立ち情報 おい問わ合せ
薬剤師の転職・就職サイト > お役立ち情報 > 保坂のりよしの医療制度改革レポート

51.乱訴防止法は救世主になり得るか

わが国でもPL法が動き出したが、添付文書に記載された事項は十分に熟知して推売する必要が出てきた。間違った説明や保管上の悪さから発生した事故は、すべて薬局の責任となる。すでに気がつかれていると思うが、一般用医薬品の外箱には「服用の際には、添付文書をよくお読み下さい」と、大きく記載されるようになった。

パッケージを開いて添付文書を取り出すと、「この添付文書は、本剤の服用前に必ずお読み下さい。また、必要なときに読めるよう本剤とともに使い終わるまで大切に保管してください」という数行が加わっている。使用上の注意事項に記載しておけば、不適正に使用して起きた事故、及び誤飲は本人の責任となるからだ。

視察中にアセトアミノフェンを配合した解熱鎮痛剤を購入し、その説明書をぜひご覧になっていただきたい。劇症肝炎との因果関係が認められてことで、服用方法について詳細に規制されているのに驚かれることだろう。

しかし、米国で実際に起きた医薬品訴訟で次のような判例がある。法廷で弁護側は添付文書の文字の大きさを指摘した。その1枚をお年寄りの陪審員に手渡し読み上げるよう依頼したのである。薄暗い法廷内で小さな文字を読むことは無理があったし、表現についても素人が的確に解するには難しすぎる部分もあった。法律に則ったおざなりの添付文書はメーカー側の敗訴に終わっている。なかでもクセモノは、「使用にあたって医者または薬剤師に相談下さい」の一項と、「改善が見られない場合や発診などの症状が表れた場合は、服用を中止し医者または薬剤師にご相談下さい」の数行。アメリカの判例から見て、メーカーは責任を薬局側に押しつけてくる可能性が大きいので注意する必要があろう。

話をリーベック事件に戻すが、一杯のコーヒー訴訟発生からわずか3年あまりで乱訴に歯止めが掛かろうとしている。消費者第一優先のアメリカで、わずか3年といった短期間で司法改革ができたのは異例の出来事である。これは異常ともいえる行き過ぎの訴訟を常識ある形に戻そうとしたものだと解釈している。

1995年3月に両院で可決された乱訴防止法は、訴訟大国と国際批判を浴びている巨額の損害賠償金を制限することで、アメリカ国民からの乱訴を阻止することを狙ったものである。この司法改革の大きなポイントは、@医療過誤損害賠償額の上限設定、A懲罰的賠償額の抑制、B訴訟費用の敗訴側負担、C賠償責任の公正負担、D州の司法制度基準の統一化の5つが上げられる。

臓器の摘出が不必要だったといわれる医療過誤訴訟が年々増加しているが、なかでも、本人の承諾を受けたにも関わらず発生する子宮や扁桃腺摘出が大きな問題となっている。精神的苦痛を根拠に賠償額は天井知らずだが、この乱訴防止法では生殖能力の喪失や精神的な苦痛など、非経済的な損害についての賠償額は、上限を25万ドルまでと定めている。製造物責任など、製薬企業の責任に基づく訴訟では法外な要求がまかり通っているのが現実である。裁判が長引けば、それだけ企業イメージが下がるので妥協せざるを得ないからだ。

この度の改正では、企業責任に対する懲罰的賠償額の上限を設け、これは治療に要した医療費と損失所得を合算した合計金額の3倍までとしている。訴訟費用については、従来の弱者救済や消費者の味方といった一方的な考え方を改め、敗訴側が相手の訴訟費用を負担しなければならなくなる。いわば、声の大きな人が得してきた乱訴は減り、法的根拠のある訴訟しか起こらなくなることが予想される。

4項目に挙げられている「賠償責任の公正な負担」については、従来の連座制が廃止されることになった。よくあることだが、複数の企業に対する訴訟事件において、部分的にしか責を負わない企業までが賠償金を全額負担されていたが、これを改め出荷高や事故の大きさに応じ公正に割り当てられることになる。5つめの「州の司法制度基準の統一化」は、史上初めての大改革として話題を呼んでいる。

合衆国と呼ばれるお国柄だけに、連邦法より州法が優先されることが多かった。今回の改革では、訴訟関連のおもな州法を廃止し、各州の重要な分野に全米統一基準を設定することになった。これは医者法から薬事法まで関連していることだが、一杯のコーヒーが引き金となった乱訴防止法は、いままでの民事訴訟費だけでも年間1、300億ドルから減らすことができるという。わが国では、やっと製造物責任法が動き出したばかりだが、むだな経済的損失が起きないよう常識ある運用をしていきたいものである。

ノーマンロックウェルの描いた「ドラッギスト」は、私の大好きな絵で、1939年のサタデーイーブニングポスト誌の表紙を飾ったものである。それだけに改めて大きなサイズで再登場させた。ぜひ今回の思い出として額に入れて欲しい。風邪を引いてしまった男の子が、薬剤師が調合するお薬をじっと見つめている。乳鉢の下には米薬局方がおかれ、薬剤師が背にする壁には薬剤師免許書が掲げられている。シロップ剤が汎用されるのは、ヨーロッパの影響が大きい。

前のページへ

連載コラムTOP


 序.米国の医療改革が
        日本に及ぼす影響


 2.民間医療保険が
        医療の中核を担う

 3.民活から始まった
        医療保障制度

 4.弱者を救済する
        公的医療保険制度

 5.税金が安く福祉充実の
        州へ人口移動

 6.地域医療を担う
        ホームドクター制度

 7.さらに細分化される
        専門医制度

 8.掛け金によって異なる
        医療サービス

 9.米国の病院における
        医療サービス


 11.在宅医療を支える
        ボランティア社会

 12.民間活力が誕生させた
        HMO医療組織

 13.ニクソンが導入した
        新医療保険

 14.カーターから
        レーガンの時代へ

 15.医療事業の
        連邦予算による支出

 16.出来高払いから
        定額払いの医療へ

 17.先進国の平均入院日数と
        糖尿病疾患


 19.公的医療費を補足する
           メディギャップ

 20.米国の処方医薬品
           上位100品目



 23.受け皿の整備が在宅
           医療を進めた

 24.バウチャーを配給する
           ブッシュプラン

 25.負担額によって決まる
           医療サービス

 26.大きな政府の
           復活になるか


 28.処方せんフィーは
          2ドル50セント

 29.6年間で612店の
          独立薬局が消滅

 30.専門性への転換を
          進めるキーン氏


 32.議会が処方せん
        薬価抑制法案を検討




 36.より手ごろな価格の
           医療を約束



 39.医療のセキュリティー
           ナンバー制度





 44.医療費を押し上げる
          医療過誤保険

 45.一夜にして
          百万長者になれる


 47.医療保険の
           不思議なからくり


 49.一杯のコーヒーが
           2億9000万円


 51.乱訴防止法は
         救世主になり得るか